雑記帳 |
私の手法2 〜アプローチ〜 |
初めての家を訪ねるとき、門を開け、玄関に至るまでの間に胸の高鳴りを覚えることがあります。最初にその人に出会う期待と不安が入り交じった心理。それは次に起こるドラマのプロローグなのです。このアプローチがその舞台です。小説ではないので、ストーリーはないのですが、アプローチでその人となりをしのぶことができます。厳格な家庭なのか、フランクな家庭なのかなど、このアプローチで推し量っているのです。 そのアプローチに距離が十分取れるならば、今でも使われる茶室の露地の「そですりの松」や「飛び石と延べ段」などが、優れた手法になります。しかし、敷地に余裕がなく、その有効利用を考えなければいけない現在、伝統手法以外の構成が多くならざるを得ません。アプローチの距離が取れないとき、私が使う幾つかの手法をあげてみますと、高低差で距離を伴う方法を用います。このようにすると自ずと周りの風景が変化してくれます。 もう一つは、アプローチを内部空間化し、中庭的な扱いにする方法です。私はこれをインナーポーチと呼んでいます。インナーポーチの手法をポジとすれば、そのネガとして、庭(植栽)の中に玄関を突き出す手法があります。それは、露地を玄関でふさぎ、玄関ドアを開けると再び露地に通じさせる手法にもなります。 |
'12.12.28 平野敏之 |
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